ご挨拶
お達者健診研究は、2001年東京都老人総合研究所疫学部門の鈴木隆雄研究部長(現・桜美林大学)が研究責任者として、東京都板橋区の地域住民を対象とした介護予防のための包括的健診として始まった長期縦断研究です。この研究が始まったきっかけは、一人暮らしの高齢者、高齢者のみの世帯、認知症高齢者など介護を必要とする人が増えている中、住み慣れた地域で可能な限り暮らし続けられるよう、保健・福祉・医療にわたる介護サービスを社会全体で支える介護保険制度が2000年4月から始まったことです。介護が必要となる原因は、認知症、脳血管疾患、高齢による衰弱、骨折・転倒、関節疾患などです。つまり、疾病よりも老年症候群が大きな割合を占めています。そのため、地域住民を対象に、その集団内における老年症候群の危険なサインをいち早く見つけて対処すべくこの研究を立案しました。老年症候群の有症状況を正確に把握するため対象集団を無作為抽出することを重要視しています。
その後、お達者健診は、2009年から吉田英世研究部長、2016年9月から現在の大渕修一研究部長と私に受け継がれました。お達者健診は、日本の高齢社会の特徴を映し出すニーズに合わせるべく、老年症候群の予防を目指す2001年コホートは2011年まで、2002年コホートは2012年まで追跡調査を実施しました。その後、2006年に立ち上げた尿失禁予防を目的としたコホートは2017年まで、2008年に立ち上げたサルコペニア予防を目的としたコホートは2018年まで、2011年に立ち上げた健康格差を克服するための研究コホートおよび2017年に立ち上げたフレイル予防を目的としたコホートは継続調査を行い、延べ27,000名以上を調査しました。収集したデータを分析し、英文の国際雑誌に121編、国内雑誌に37編、計158編を掲載し、国内外より高い評価を得ました。お達者健診研究は、研究開始時より、研究所の疫学部門が中心でしたが、当センターによる全面的な支援を得て行われてきました。その結果、研究課題は多方面に広がり老年症候群全体に及ぶようになるとともに、研究の質も深まってきました。また、2015年に日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業が始まったことを契機に、国立長寿医療研究センターや大学・研究施設や民間企業との共同研究を行い、国家的プロジェクトである「大規模認知症コホート研究」にも参加し、中核的な役割を担っています。
お達者健診研究は、板橋区住民の皆さまと東京都健康長寿医療センター研究所との信頼関係の上に成り立っています。長年に渡りご参加いただいた地域住民の皆さまに感謝の意を伝えるとともに、築き上げた信頼関係をこれからも大切に守りながら板橋区民の健康を支援します。さらには、蓄積され続けている膨大なデータを学術論文として公開し、研究内容を分かりやすくまとめて都民に還元します。今後も新たな知見を得るための調査を続けて行い、都民の健康寿命の延伸に貢献できる情報発信に努めたいと考えています。
メンバー紹介
研究部門内の構成員 |
社会参加と地域保健研究チーム
藤原佳典、鈴木宏幸 自立促進と精神保健研究チーム
金憲経、小原由紀、岩崎正則、笹井浩行、小島成実、枝広あや子、本川佳子、大須賀洋祐、釘宮嘉浩 福祉と生活ケア研究チーム
大渕修一、河合恒、吉田祐子、江尻愛美 老化制御研究チーム
石神昭人 神経画像研究チーム
石井賢二 |
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病院部門および他機関の構成員 |
糖尿病・代謝・内分泌内科
荒木厚 歯科口腔外科
平野浩彦 桜美林大学
鈴木隆雄 国立長寿医療センター研究所
島田裕之 人間総合科学大学
熊谷修 弘前大学
井原一成 東京医療学院大学
小島基永 高崎健康福祉大学
解良武士 埼玉県立大学
西原賢 北海道大学
渡邊裕 |